「楽しい」が僕を走らせた ケンブリッジ飛鳥 × CoachNavi
2025年10月07日 12:59
― 陸上を始めたのは中学からだと伺いましたが、始めたきっかけは?
そうですね。小学校の6年間はサッカーをやっていました。中学に上がるタイミングで、学校にサッカー部がなかったんです。クラブチームでサッカーを続けるか、学校の部活動をやるか悩んでいて。いろんな部活の体験に行った中で、陸上部の顧問の先生と話す機会があって、「お前、センスあるな」って言ってもらえたんです。それがすごく嬉しくて、「じゃあやってみようかな」って思って、陸上を始めました。
― 顧問の先生のひと言がきっかけだったんですね。
はい。自分の中ではあの言葉がスタートでした。
― 中学・高校・大学と、指導者との出会いもいろいろあったと思いますが、忘れられない言葉などはありますか?
そうですね…。どのタイミングでも、本当に「必要なときに必要な人と出会ってこられたな」と感じています。技術もそうなんですけど、それ以上に「人としての成長」を支えてもらったというか。僕、けっこう「もっともっと」と上を目指すタイプなんですよ。記録が出ても、入賞しても、満足しない。でもあるとき、先生に言われたんです。「お前のそういう姿勢はすごくいい。でも“今”をちゃんと楽しめるようにならないと、その先がしんどくなるぞ」と。
― その言葉、確かに刺さりますね。
すごく腑に落ちたんですよね。だから今も、若い選手に「その瞬間を楽しむこと」を大事にしてほしいと伝えてます。楽しめているから、ここまで来られたと思うんです。
― ケンブリッジさんにとって「楽しい」と感じる瞬間って?
変だって言われるかもしれないけど…スタート直前の緊張感ですね。あの10秒に何万人もの視線が集中して、世界が静まりかえる感じ。音が聞こえなくなるくらい集中して、無心で走って…。終わってから「あの瞬間にまた戻りたい」って思うんです。
― 観客側も息を呑む瞬間ですよね。
そうなんです。あのシーンって、スタジアムの中の全員がひとつになってるような感覚がある。母も「何回見ても慣れない」って言ってました(笑)
― 今、ケンブリッチさんが後輩たちに教える側になって伝えたいことは?
技術的なことももちろん大事だけど、「こうしろ」って一方的に押しつけるんじゃなくて、「どう感じた?」って聞いてあげること。僕が教わってきたコーチたちは、そこを大事にしてくれていました。
― 顧問の存在がいかに大きかったかが分かりました。もし当時土日の「顧問がいない部活」だったら…?
たぶん、自主練はしてたと思うけど、練習の質は落ちてたかも。週2日でも、1年で見ると数十日になるわけで、その差は大きいと思います。今後、平日は先生、土日は外部コーチという形になるとしたら、その両者が言っていることが食い違うと、選手は混乱しますよね。だからこそ、間に立って調整できる存在が必要だと思う。